「検査では異常なしと言われたのに、腹痛や下痢が何年も続いている」
「大事な場面になるとお腹が痛くなり、トイレが頭から離れない」
長く続くお腹のお悩み、もしかすると過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)かもしれません。過敏性腸症候群は、日本人の約10〜15%が抱えるとされています。検査で異常が見つからないため、見過ごされやすい病気です。
本記事では、IBSの基礎知識から治療方法まで分かりやすく解説します。
◼️1.過敏性腸症候群(IBS)とは

過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)は、腸に炎症や腫瘍などの異常がないにもかかわらず、腹痛と便通異常をくり返す機能性の消化管疾患です。日本人の約10〜15%、つまり10人に1人以上でみられ、現代社会において非常に身近な病気です。
腸脳相関(Gut-Brain Axis)
IBSには、脳と腸の連絡ネットワーク「腸脳相関(Gut-Brain Axis)」の乱れが深く関与しています。腸と脳は自律神経や免疫系を通じて常に情報をやり取りしており、ストレスや不安が引き金となって腸の運動異常等が生じます。
IBSの分類
IBSは便の状態によって以下4つの型に分類されます。
- 下痢型(IBS-D)
- 便秘型(IBS-C)
- 混合型(IBS-M)
- 分類不能型(IBS-U)
下痢型(IBS-D)は突然の腹痛と激しい下痢が特徴で男性に多くみられます。便秘型(IBS-C)は、硬い便や排便困難が続き、女性に多い傾向です。
混合型(IBS-M)は、下痢と便秘を数日おきに繰り返すもの。いずれにも当てはまらない場合は、分類不能型(IBS-U)とされます。
型の違いは治療の選択に直結するため、自分のパターンを把握することが大切です。
◼️2.過敏性腸症候群(IBS)の症状と診断

IBSの中心的な症状は、腹痛や腹部不快感と便通異常です。
「排便すると一時的に腹痛が和らぐ」「食後や緊張時に症状が出やすい」という点がIBSに特徴的なパターンです。腹部膨満感やガスの増加、残便感を伴うことも多くみられます。
診断基準
IBSの診断には国際基準「ローマⅣ(Rome IV)基準」が用いられます。ローマⅣ(Rome IV)基準の内容は以下の通りです。
ローマⅣ(Rome IV)基準
- 排便によって腹痛が改善する
- 腹痛の始まりとともに排便頻度が変化する
- 腹痛の始まりとともに便の形状が変化する
IBSの診断基準は、「最近3か月間、週に1日以上の腹痛が反復して存在し、上記2項目以上を満たすこと(症状の始まりは6か月以上前)」と定められています。
診断時の注意点
診断の前提として、他の疾患との鑑別が必須です。血便や発熱、6ヶ月以内に3kg以上の体重減少、夜間に目が覚めるほどの下痢などの「レッドフラグ(警戒信号)」がある場合は、潰瘍性大腸炎・クローン病・大腸がんの可能性があるため速やかに受診してください。
診断には問診に加え、放射線被ばくのない腹部エコー検査で腸の状態、便やガスの溜まり具合を確認したり、必要に応じて大腸内視鏡検査で器質的疾患を除外したりします。
◼️3.過敏性腸症候群の治療方法

IBSの治療は「食事療法」「ストレスケア」「薬物療法」の3本柱を症状の型・重症度に応じて組み合わせます。
「いつお腹が痛くなるかわからないから外出が怖い」という状況は、適切なケアで対処できます。お腹の状態を知り、日常生活への支障を最小限にすることが治療の目標です。
食事療法(低FODMAP食など)
食事はIBSの症状に直結します。近年エビデンスが蓄積されているものが、低FODMAP食です。まず、FODMAPとは腸内で発酵しやすい糖質の総称で、お腹の張りやガスの原因となります。
低FODMAP食は、日本消化器病学会のガイドラインでも言及されている食事です。複数のランダム化比較試験で従来の食事指導よりも症状改善効果が高いことが示されています。ただし、制限が多く栄養バランスが偏るリスクがあるため、医師や管理栄養士の指導のもとで実践することが推奨されています。
低FODMAP食一覧
| 食品群 | 低FODMAP食品 |
| 穀物 | 米、玄米、オートミール、そば、グルテンフリー製品、タピオカ、米粉 |
| 野菜 | ナス、ニンジン、キュウリ、トマト、キャベツ、白菜、ほうれん草、じゃがいも |
| 果物 | バナナ、イチゴ、ブドウ、キウイ、オレンジ、みかん |
| 乳製品 | ラクトースフリー牛乳、バター、マーガリン、ハードチーズ(チェダー、パルメザン)、アーモンドミルク |
| タンパク質 | 鶏肉、魚、卵木綿豆腐 |
| 調味料 | 醤油、塩、砂糖、味噌 |
| 飲み物 | 水、お茶(一部)、コーヒー(少量)、日本酒、ウイスキー |
ストレスケア
腸脳相関が関わるIBSでは、生活習慣の見直しによるストレスケアを意識してみましょう。週2〜3回以上の有酸素運動(ウォーキングなど)は腸管運動を促進し、ストレスホルモンを低下させます。
また、睡眠不足は腸トラブルを悪化させるため、7〜8時間の睡眠確保も重要です。
心理的アプローチとして、認知行動療法(CBT) がIBSの症状改善に有効であることが示されており、薬物療法との併用で相乗効果が期待されます。腹式呼吸・マインドフルネス・趣味によるリラクゼーションも日常に取り入れてみてください。
薬物療法
生活習慣の改善だけで十分な効果が得られない場合、型に応じた薬物療法を行います。
薬の選択は症状の型や患者さんの状況によって異なります。自己判断で市販薬を長期使用するのではなく、消化器内科医に相談のうえ適切な治療を受けることが大切です。
◼️まとめ

IBSは日本人の約10〜15%にみられる機能性消化管疾患です。ローマⅣ基準で診断され、治療は低FODMAP食やストレスケア、薬物療法等を組み合わせて行います。
IBSは「検査で異常がないから大丈夫」と自己判断しないことが大切です。症状が2〜4週間以上続く場合は消化器内科を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。「もしかしてIBSかも」と感じたら、一人で悩まず専門医にご相談ください。


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